母は夜逃げした

「今、大阪やねんけど」
ある日突然、母から電話がありこう告げられた。
え?どういうこと?
意味が分からずに私は呆然とした。

母は弟の住む大阪に来ていた。
家財道具を置いたまま、夜逃げをしてきたのだ。

夜逃げの話を聞いても、やはり意味が分からずに呆然としたままだった。

家賃が払えない

母は、家賃が払えず、家主からの請求に耐え切れず、家を出てきしまったとのこと。
私達も仕送りはしていた、弟もある程度助けていたと思う。
なのに、何故?

田舎の町なので、仕事がないというのが理由とのことだ。
今まで母は造船所などで肉体労働をして稼いでいた。
そのまま続けるには加齢に伴い体力もついていかず。
かといって、それに見合うくらいの仕事も見つからず。
思うように収入もなくなり、生活が立ち行かなくなったらしい。

当時私は結婚していたが、厳しい姑に何と言って報告すればいいのか苦しんだ記憶がある。
≪参照≫全ての人格を否定され、そこから生まれ変わった 離婚の1番の原因
今すぐ帰って!と言い放った気がする。

結局その後母は、大阪でビルの清掃などをしながら、弟と生活を始める。

見捨てられたモノたち

私が高校を卒業して家を出るとき。
賞をもらった絵や文集、思い出の詰まったモノたちを最小限に厳選して、一つの段ボールに詰めておいた。
「これだけは絶対捨てないで」
そう記しておいた段ボールは、その1年後の引っ越しの時には捨てられていた。

母が私の結婚式で神戸に来た時、結婚前に乗っていた私の車を譲ることになっていた。
田舎は公共交通機関が整っておらず、仕事に行くのにも車が必要になることが多い。
車は無料で譲るけど、名義変更は自分でしてねとお願いした。

「仕事で使うから、ちょっと貸して」と、スーツも何着か持って帰った。

夜逃げと言うからには当然だけど、その時車もスーツも全て放置してきた。

夜逃げの後処理

いくら逃げてきたとはいえ、残してきた荷物をそのままにしておいていい訳がない。
結局、後の作業は私がすることになった。

住宅の家主に連絡して、全てを処分してもらった(もちろん有料で)
選別することもできないので、全て廃棄してもらった。仕方がない。

ところで、肝心の車はどうなった??

車の事を聞くと、家の裏の空き地に放置したままだと言うではないか。
更に、結局名義変更もしておらず、私の名義のままだったのだ。
(ちなみに、名義変更代のお金は2回ほど渡してるが、全て使い込んだようだ・・・)

つまり。
私名義の車が、田舎の空き地に不法投棄されているという、最悪の状況なのである。

こんな姿になって・・・

車もまた、家主さんにお願いして処分してもらった。
(繰り返すが、お金はこちらで出した)
名義は私なので、名義変更だけは私がしなければならない。

数日後のある日、私宛てに家主さんからナンバープレートが送られてきた。

私の愛車は当時の雄姿は見る影もなく、ナンバープレートだけになってしまったのだ。

こんな姿になってしまって・・・・・・・・
薄っぺらい封筒に入ったナンバープレートを抱え、私は運輸局へ足を運んだのだった・・・。