介護の相談は誰にしますか?相談できる人の大切さ

介護のこと、相談できる人はいますか?
それは多くの方が「誰に相談したらいいか分からなかった」「友達に聞いたけど、思っていたことが教えてもらえなかった」などと口にされていることです。

介護の相談を誰にしますか?というアンケートの結果です。
6割近くの方がケアマネージャーさんに相談されています。
次いで、配偶者や友人となっています。
要介護認定を受けておられる方は、ケアマネージャーさんに相談することも可能かと思いますが。
もともと介護を全く受けておられない方が、急な病気や骨折などで、入院期間中に要介護認定を受けることもあります。
その時は、相談できるケアマネージャーさんもいないこともあります。
介護は必要なくても、一人暮らしは不安だから、いずれか施設に入りたいけと思っておられる方もいると思います。

核家族化、単身世帯の増加に加え、地域コミュニティも希薄になっている現代社会では、気軽に相談できる人・場所というものが少ないということも考えられます。

戦前は、子育ても介護も一人でするものではなく、家族全員で、さらに言えば地域全体でするものでした。
多世代の家族が同居して、家事も分担及び共同作業、子どもたちもお手伝いをするのが当たり前。
地域にはかならず怖いおじさんもいたりして、悪いことをした子どもは怒られていました。
それは、地域で子育てをしていたということなのだと思います。
出来た料理や野菜などはおすそ分けしたり、物々交換したり。
地域全体がコミュニティとして、子育ても介護も助け合って行っていました。

今は核家族化し、介護も子育ても仕事も同時進行しなければならない時代です。
地域のコミュニティや専門家を十分に活用して、
相談できる人、場所、息抜きできる場所を作っておくことが大事なのだと思います。

また
「配偶者や友人に相談した」というお客様も多いのですが。
介護の経験も少なく、限局的になってしまいがちです。
自身が体験したことでしか話せないとなると、介護の方法や施設の選択にも偏りが出てしまうことが多いです。

以前読んだワーキングケアラーの本の中で
「介護に関することを素早く的確に相談するためには、介護のプロと仲良くなっていることが大切です」
というフレーズがありました。

ケアマネージャーさんに相談できない場合でも、いつでも気軽に相談できる場所は必要かと思います。
地域のつどい場や家族会などを、大いに活用してみてください。

エルダリーサポート「これから」では、そういったお悩み事を無料で相談できる窓口です。
困ったこと、心配なこと、専門的なことでの質問などありましたら
お気軽にご相談ください。

私も、パーキンソンの母親の介護経験者、ワーキングケアラー
そして、訪問看護の現場で働いてきた看護師です。
何等かのお役に立てれば幸いです。

看取りと延命処置 家族で話すことの大切さ

主治医や介護事業所からの問いかけ

要介護4になった母
主にベッドで臥床して過ごし、食事の時だけトイレ歩行し座って食事をするという生活です。
相変わらずヘルパーさんが1日に5回ほど訪問し
介助をしてくれています

ベッドに横になっていれば寝ていることも多く
認知症も進行しました

先日往診の先生から「これからどうする?施設に入ること考えてる?延命処置どうする?」

そんな電話がありました

介護事業所の管理者さんからも

「施設入所はお考えではないですか?」との連絡もあり

家族で一度話し合う時期かも。
そう思い、夏に姉弟集まって話し合うことにしました。

看取りと延命処置

京都にいる娘と、大阪方面の弟達とその家族
全員の日程調整をして、母に会いに行ってきました。

医療職である私は、延命処置のことは分かっていても
医療にも縁なく、介護もしたことの無い弟達は
「延命処置とは?」
という感じなので、私から説明しました。

母自身も元気な時から
「何にもしなくていい」
と言ったのを、姉弟全員が鮮明に覚えていましたし
姉弟全員一致で
「延命処置はしない。自然な看取りで」
という話になりました。

施設入所についても
介護事業所の方は
「日中一人で過ごすことが多いので、施設の方が良いのでは?」
と言ってくださいましたが

私達姉弟は
「別に、本人が嫌がってないんやから、このままでいいんちゃう?」
という、あっさりな判断で
在宅介護継続となりました。

主治医や介護に携わる関係者と話し合いをしよう

今回、私達姉弟は同じ意見だったので、何の苦労もしませんでしたが。
中には兄弟間や親戚で意見が分かれることがあると思います。

その時は、主治医やケアマネさんに相談したり
時には担当者会議を開いてもらったりして、話し合いをすることが大切だと思います。

昔のように多世帯で過ごす環境ではなく
それぞれが核家族で介護をしていく現在の日本では
介護を続けていくことに困難に遭遇することが多いと思います。
そんな時は迷わずプロに相談して
プロのお力を借りながら介護を続けていくのが、介護のコツですね。

在宅介護?施設入所? 本人も家族も幸せになるベストな方法は?

ベッド上での生活になった母

パーキンソン病+レビー小体型認知症の母
先日の誕生日で80歳を迎えました

パーキンソン病を発症したのは、恐らく60歳頃
長い間薬で調整して、日常生活には問題がない時期が続きました。

3年前の秋に自宅で倒れて救急搬送。
自宅での生活は難しいのでは?と言われたことをきっかけに、私の自宅の近くに居を構え直し
近距離別居介護をスタート。

その近距離介護も3年目に突入したこの春
いよいよ母はベッド上での生活になりました。

パーキンソン病は、その症状は比較的長期間薬でコントロールすることが可能です。
母も発症して18年くらいは、ほぼ無症状で経過していました。

病状が進行すれば、薬を増量して症状をコントロールすることが可能なのですが
母の場合は、薬を増量すると活動性が高くなったり幻覚が強くなったりして、危険行動が増えてしまうので、増量は断念。
転倒も増え、立ち上がることも少なくなりました。

お正月に外に出て側溝に嵌る事件を起こして以降、見る見る弱ってしまい、とうとうベッド上での生活となりました。

一番ベストな介護の場所はどこ?

お世話になっている神経難病専門医でもある主治医に、尋ねられたことがあります。

「お母さんは、ずっと自宅で看るつもり?」

私は、何が何でも自宅で看たいとか、施設が嫌だとか、絶対施設に入れたいとか

全くそんなことは考えたことは無く。
自然の流れで、自宅よりも施設が良いと思ったら施設。自宅が良いと思ったら自宅。
そう考えてます。

主治医にもそのように伝えました。

母自身も認知症はかなり進行し、家がいいのか、施設が嫌だとか。
そんな自分の意思というものもなくなってきました。

私は、日中の母の世話は殆ど定期巡回随時対応型訪問介護看護や訪問看護ステーションさんにお任せしており
要所要所の必要なポイントだけでしか、関わっていません。
1週間に1度程度、様子を見に行くくらいです。

2年前は、1日何回も電話がかかってきたり、何度も行方不明になって警察に保護されたりしていましたが、その時期から比べると今の介護は全然楽です。

ただ、介護のスタッフが誰もいない時間。
倒れていて、すぐに助けて欲しい時などに
誰かが近くにいれる環境だったら、母も不安がないだろうな・・・と思うことはあります。

施設入居の選択のメリット

もしこのまま、施設の方が母に適していると思えば、恐らく施設入居を進めると思います。

介護をされている方達の中で良く聞かれる言葉

「家に居たいと言っている」「施設は嫌だと言っている」「親を施設に入れるなんて、申し訳ない」

皆さん、何とか在宅介護を続けておられます。

でも、介護の現場、施設の状況などを知っている私からすれば

施設はそんなに悪い所??と疑問が浮かびます

誰だって、家から離れるのは不安があります。
長年住み慣れた自宅から出て、見知らぬ部屋で生活するということは、抵抗があるに決まっています。
保育園や幼稚園に初めて行き始めた子供だって「行きたくない」と泣くことがあると思いますが
それでも、少しずつ順応していきます。

高齢者施設の高齢者の多くは
快適な環境の部屋で、スタッフに見守られ
時にはレクリエーションなどで、和気あいあいと共同生活を楽しんでいたりします。

介護施設のスタッフも、入居者さんたちのことを思い、懸命に介護してくれてます。

施設だってメリットは一杯あるんです。

家族、本人それぞれが幸せになるベストな方法を選ぶ

高齢になった親たちを看るのは当たり前

育ててくれた親への恩返しという気持ちは大切だと思いますが、それは全ての望みを叶えることではないと思います。

介護する側にも家族があって
残される家族には、まだまだこれからの人生がある。

介護離職をされる方も増えてきていますが
介護が終わった時に、再就職することは大変困難でしょう

ワーキングケアラーでもある介護者が、心身を病んでしまうことだってあります
そのことで、介護者の家族にも影響するでしょう。

介護されるご両親が、娘や息子達の幸せを願っていないはずはありません。
ケアする側の体調や、家庭環境などを加味すること。
当事者が本当に家に居るのが良いのか、施設に入ったら良いのか
一番ベストな方法を見極めることが必要ですね。

介護のこと、施設のこと
迷った時はいつでもご相談ください

「何で便を触るの?」便を触ってしまう原因は必ずあるのです

認知症かも?と気が付いた時は、症状は進んでいます

認知症の前段階、軽度認知障害(MCI)は、物忘れと区別するのは難しいです。

認知症の症状と物忘れの違いについては、こちらの記事をご参考ください。

認知症の初期症状 物忘れと認知症の違いは?

認知症と物忘れの大きな違いは、記憶がすっぽりと抜けてしまうのかどうかの違いが一番分かりやすいとお伝えしました。

ただし。
認知症になられた方は、物忘れをしていることや認知機能に不安があることを悟られないようにする「取り繕い」という行動を取ることがあります。

初期のうちは、ご自身でも「何かおかしい」と感じておられて、それを自らも否定しようとして、周りに気付かれないように取り繕うことが多く、気が付いた時には認知症が進行しているということが多くあります。

このブログで何回か話していますが

  • 財布や通帳などの大事なものが頻繁になくなる
  • 財布や通帳などを「盗られた」という発言が多くなる
  • 食費が異常にかかる(同じものを何回も買ってくる。食べたことを忘れるので何回も食事を食べる)
  • 排泄のコントロールが乱れてくる(便秘、尿失禁など)
  • 汚れた服や下着などが箪笥の中から出てきたりする

というような症状のほとんどが、認知症の症状を隠そうとして起こる出来事です。

便秘に要注意

中でも、排便に関して良く聞くトラブルがあります。

  • 汚れた下着を隠している
  • 便を触ってしまう
  • 糞尿で汚れた手であちこち触るので汚染している・・・等

介護の現場では「弄便(ろうべん)」行為が問題になります。
在宅介護されている方も、トイレやタオルについた便などを見て、うんざりされる方も多いかと思います。

「何で便を触るの?」「触らないでって言ったでしょ?」「ちゃんと手を洗って!」

と、怒りたくなる気持ちは分かりますが。

以前「徘徊は徘徊じゃない」ということをお話ししました。
「徘徊」ではありません!在宅で安心して暮らす地域の課題とは?

便を触るのには、ちゃんと理由があるのです。

私達は、便秘になれば「お腹が苦しい」「お腹が痛い」などと症状を把握し、対処することができます。
認知症になると、不快と感じることがあっても、それをどのように対応すればよいのかわからなくなることが多いのです。

認知症により過食や偏食、水分不足などにより便秘や下痢になりやすくなる→便が最後にいつでたのかも把握できなくなる→酷い便秘になる→肛門付近に硬い便が溜まって出なくて苦しい→「何かが詰まってる!」と感じて触ってしまう

または。
便秘や下痢、失禁などで下着が汚れてしまう→汚染してかぶれてしまい、痒みや痛みで不快を感じる→触ってしまう

いずれにしても、不快なことに対して何をしたらよいのか分からずに、触ってしまうのです。

また、汚れた下着や手などを、どうしたら良いのか分からずに、そのままタオルで拭いてしまったり、壁を触ったり、下着を隠したりしてしまうのです。

専門職の力を借りてください

もし、上記のような行為(弄便、便汚染など)があったら、是非専門職に相談してみてください。

在宅介護であれば、ケアマネージャーに相談してみて下さい。
訪問看護さんが来ていたら、看護師さんに相談してみて下さい。

認知症の方の便秘は意外に気が付かないことが多いです。

私の母親も、私が介護を始める前に緊急入院した時、酷い便秘になっていたそうです。
訪問看護師時代にも、認知症の方が便秘からくるイレウスで入院になったケースを何人か見ています。

私達看護師は、例えば1週間に1回の訪問であったとしても、次の訪問までに利用者さんがどのように排便コントロールできるのか、予測して看護しています。

訪問回数を増やした方が良ければ、調整したりします。

排便が良好にコントロールできて、便に対する不快感がなくなれば、弄便行為も少なくなります。

介護スタッフさんに介入してもらい、ある程度定期的にPADなどの交換をすることで、オムツかぶれなどを防ぐことも可能です。
そうすれば、PADを触ったり隠したりすることも少なくなります。

介護されているご家族は、何とかして自分たちで頑張ろうと思われる方が多いように思いますが。

使えるサービスは目いっぱい使ってください。

介護保険サービスでフォローできなければ、保険外サービスを使うことも可能です。
保険外サービスの事業所も増えてきていますので、是非ご相談ください。

こちらのコメントでも相談承りますので、お気軽にご相談ください。

在宅介護に100%を求めてはいけない どこを妥協すればいい?

他人に任せることの難しさ

母は私の自宅から自転車で10分程度の所で一人暮らしをしています。

2022年の冬、大阪で緊急入院した母。
主治医に「一人暮らしは難しい」と宣言されたので、退院と同時に私が住んでいる神戸市に引っ越すように手配しました。

高齢者、特に認知症になると、環境の変化に弱くなります。

入院などで不穏になったりするのは、病気が原因のこともありますが、環境の変化に対応できないことが原因のことが大多数です。

致し方なく引っ越しを決めましたが、母が大きなトラブルもなく環境の変化に適応できたのは、ある意味運が良かったのかもしれません。

定期巡回随時対応型訪問介護看護を活用

退院後より、定期巡回随時対応型訪問介護看護というサービスを利用していました。

(サービスの内容については、過去の記事で⇩)
定期巡回随時対応型訪問介護看護ってどんなサービス?
定期巡回随時対応型訪問介護看護ってどんなサービス?②

定期巡回は

短時間、複数回の訪問が可能である。
夜間も対応可能
緊急時にもかけつけてくれる

というメリットのあるサービス。

当時、想像以上の回復力で元気になった母
薬を確実に飲むことが一番の課題だったので、1日に5回以上もある内服確認に訪問してくれるこのサービスは、とても重宝しました。

定期巡回随時対応型訪問介護看護のデメリット

事業所の数が少ない

これまで、定期巡回随時対応型訪問介護看護のメリットは沢山話してきましたが。

最近少し思うところがあったので、デメリットの事例の一つとしてお話しさせてもらいます。

定期巡回随時対応型訪問介護看護サービスは、利用者にとっては救世主みたいなサービスです。

ところが、様々な事情があって、事業所の数は少なく、利用したいと思っても利用できない人が沢山いるという状況です。

利用できたとしても、他の事業所がないので、たとえ不満があっても事業所を選べないということもあります。

サービスの内容に納得いかない

在宅介護を始めてから2年。
母のパーキンソン病も少しずつ進行し、自分で料理などを作ることはできなくなってきています。

最初の頃は、ほぼ自分で作った物。

少しずつできなくなってきたので、コープの個配で頼んだ冷凍食品(冷凍の丼物や、お好み焼きなど)を中心に、私が持参したお惣菜などで食事を準備してもらってました。

私がお惣菜を作り置きして、数品冷蔵庫に入れておくと、ヘルパーさんが毎食準備をしてくれるという体制でした。

が、ある時。
「同じメニューが続く」「栄養バランスが悪くなる」などという理由で、事業所側から宅配弁当の導入を提案されました。

お弁当は毎日取ると、なかなか高額になります。
できれば使いたくなかったのですが、事業所のスタッフさんも大変なんだろうと思い、忖度してしまいました。

定期巡回随時対応型訪問介護看護は短時間で多くの利用者さんを回るので、料理をしてくれない事業所さんが多いです。

そんな中で「料理もします」という事業所ではあるのですが、結局「より早く次の利用者に行きたい」と思っているのでは?

もともと自分が勤めていた事業所でもあるし、性格的に遠慮してしまう部分もあり、お弁当の導入を受け入れることになりました。

「総菜も控えてください」に疑問

お弁当を導入してからしばらく経過した日の担当者会議(ケアマネ、家族、事業所のスタッフが集まり、ケアの内容などについて話し合う会議のこと)で、料理のことが議題に上がりました。

私は、つくりおきしたおかずを持って行くのですが。
付箋に日付を書いたものをタッパに貼って、順番に食べれるようにしています。

・・・が、いつまでも残っていたり、賞味期限が切れても捨てずに置いてあったりしたので、何度か注意しました。

「日付の古いものから食べてください」「賞味期限が切れてしまったら捨ててください」等

それに対して事業所側からの意見は「お惣菜が多いので、食べきれない」ということでした。

結果、お惣菜を持ってくるのは控えめでお願いしますということになりました。

私は18歳の時に家を出ています。
それまでも、母に料理を習ったことはほぼ皆無で、料理を母に食べさせたこともほぼありませんでした。

結婚し子育てをする間に、料理のスキルも上がりました。
今回介護をすることになって初めて、私がつくった料理を食べることになった母。

「料理上手やねぇ。美味しいわ」と言って喜んでくれていた母。
少しでも好きな物、美味しいものを食べてもらいたい。

そう思って頑張ってきたおかずの差し入れを抑制されてしまった・・・・。

介護に100%を求めてはいけない

自分が介護する場合も、他人に任せる場合も、決して100%を求めてはいけないと思います。

自分が100%の介護をしようとすると、必ず無理が出てくる。

介護事業所に100%を求めることも、もっと無理なことです。

「手作り料理を少しくらいは食べさせたい」そんなささやかな要求も抑制されてしまうことに、正直納得は行っていません。

定期巡回随時対応型訪問介護看護では調理はあまりしないとしても、せめてお味噌汁くらいは作ってほしい(でも作ってくれない)

最初にもお話ししたように、定期巡回随時対応型訪問介護看護の事業所は事業所数も少なく、選ぶことができないというのが現状です。

別の事業所にお願いしても、また別の部分が不具合が生じる。

思うようにやりたければ、介護事業所に任せずに自分で介護すればいいじゃない・・・という話になりかねない。
でも「ここだけは」と思う所は主張したい。

答えは出ないし、正解も不正解もないのだと思います。
今回は敢えて話をまとめずに記事を終了させていただきます。

見てくださってる方のご意見など聞かせていただけると嬉しいです。


ひょっとしたら認知症予備軍?!初期によくある行動と予防策

認知症の症状の段階について

認知症はその症状別で4段階に分けられます。

軽度認知障害(MCI)
認知症初期
認知症中期
認知症末期

認知症には根本治療の薬はありません。
症状を遅らせる薬と、せん妄や意欲低下などの症状を改善する薬はあります。

また、改善方法は薬だけではなく、症状を遅らせる対処方法もあります。
認知症だと気が付いたら、早めに対応することが大事です。

認知症各段階の症状

軽度認知障害(MCI)

日常生活に支障をきたすほどではないけれど、軽度の認知機能の低下がみられる状態です。

  • 忘れ物・探し物の頻度が多くなる
  • 物忘れが多くなる
  • 同じことを繰り返す
  • 家事に時間がかかるようになる等

認知症初期

  • 物忘れの頻度が高くなる
  • 会話についていけなくなる
  • 日常生活の作業に時間がかかるようになる
  • 意欲がなくなる
  • 以前はできていたことができなくなる等

認知症中期

  • 日付・時間・場所などが分からなくなる
  • 食事したことを忘れる
  • 更に意欲が低下する
  • 新しいことは覚えられなくなる等

認知症後期

  • 意思疎通が困難になる
  • 筋力の低下、運動機能の低下
  • 嚥下障害がおこる
  • 家族の認知も困難になる等

特殊詐欺に騙されやすいのは初期

認知症になると、判断ができないので特殊詐欺に騙されやすいと思いがちですが。

実は、特殊詐欺に騙されやすいのは軽度認知障害(MCI)の段階か、認知症初期の段階です。

中期になってくると、相手の言っていることが理解できない。対応方法も分からなくなるので、騙すことすらできなくなります。

それでも最近は「不用品処分します」と親切そうに高齢者宅を訪問して、貴金属類を安い値段で購入していく悪質詐欺もあるみたいなので、注意は必要ですね。

認知症予防と認知症進行の予防

まずは認知症にならないための方法。脳科学の観点からのアプローチ

  1. 社会との交流を持つ
  2. 適度な運動をする
  3. 新しいことにチャレンジする
  4. アウトプットする

だそうです。

これは認知症を発症した方、初期段階にも有効なんですが。

孤立は認知症を進行させます。
現代社会は、集合住宅での生活が多くなり「隣の人は何する人ぞ」で、社会との交流が少なくなる傾向にあります。

ましてや、足が悪くなった、もともと一人が好きなどの理由で、外に出る機会が少なくなると、認知症上は悪化します。

独居の方で「まだまだ元気」と思っていた方が、急に認知症が進行してしまうのは、社会との交流が減ってしまっているのも原因の一つと思われます。

また、週に2~3回の運動(30分程度、軽く汗をかく運動)は、脳血流を増加させることにも有効です。

また、中高年の健康診断でも「30分程度汗をかく運動を週に何回しますか?」とかいうチェックリストありませんか?
メタボ予防、生活習慣病の予防のためにも大切です。是非習慣化してください。

「同じお店の同じものばかり食べてませんか?」

和田秀樹 不老脳

食べるものも「いつものお店のいつものメニュー」ではなく「今日はこれを食べよう!ここは美味しそうだ」と、常に新しいことにチャレンジする気持ちが大事だということでした。

それをまたアウトプットする。
人に紹介したり、SNSなどに投稿するなどすることによって、脳は活性化されるそうです。

認知症になったら、何もかもができなくなる訳ではない

認知症になったからと言って、すぐに何もかもができなくなる訳ではありません。

ただ、認知症の進行予防にと、急にドリルをさせたり、好きでもないことをやらせるのは、間違いです。

あくまでも本人が楽しくできることを見つけて、チャレンジしてみてください。

最期のステージ 奇跡の出逢いと最期の力を振り絞った舞台

末期がんのTさん

24時間の介護及び看護のサービスを行っていた事業所に、とある利用者さんの依頼が来ました。

末期がんの60代男性Tさん。
別の県で療養していたけれど状態が芳しくなく、ご友人たちが説得して自宅に戻ってくるとのこと。

多くの仲間たちに介助されて自宅に戻って来たTさんは、私達が想像していた以上に状態が悪く、驚きました。

介護保険も利用せず、知人たちの介護だけで生活していたというTさん。
介護をするためのツールが何も整っておらず、急ピッチで様々なサービスを整えました。

沢山のご友人たちの介護

Tさんの部屋は、毎日たくさんの知人が訪れていました。
必要な食べ物や飲み物の調達から、中には介護福祉士さんもいらっしゃって、身の回りのことや介護も対応してくださってました。


そんな訪問者の中に、見覚えのある顔があったのです。
最初に会った瞬間から、お互いが「どこかで会ったことあるなぁ??」と思いながら応対してたのですが、それがどこの誰なのかさっぱり見当がつかないまま経過。

そんなある日。知人の方達のキーワードで「ひょっとして!!」と突然記憶が繋がりました

Iさんが繋げてくれたご縁

私が訪問看護ステーションの管理者をしていた時、Iさんという若年性認知症の利用者さんの訪問を担当していたことがありました。

認知症が進行して、誤嚥性肺炎などで入退院を繰り返していたIさん。奥様が献身的に介護をされており、とても素敵なご夫婦でした。

奥様のHさんは、Iさんが認知症だと分かった時から、認知症が進行しないように散歩に行ったりカラオケに行ったり、様々な人と交流できるように努力されてきたとのこと。

その後Iさんは何度か誤嚥性肺炎を繰り返すうちに徐々に衰弱、在宅看取りとなりました。

看取りの後、Iさんの奥様Hさんは何かと私に声をかけてくださいました。
私もグリーフケアなどの交流を通して更に親しくなり、「お礼がしたいから」と、とあるお店に招待されました。

もとお寿司屋さんのマスターが作る美味しい料理を食べながら、カラオケも歌えるというお店。
生前、認知症予防のためにIさんと一緒に来ていたお店です。
私は数回そのお店にご一緒させていただき、Iさんの思い出を語ったり、Hさんのグリーフケアを行ったりしながら、マスターやそのご家族、お店のお客さんとも交流を深めることとなったのです。

今回Tさんの所に来ておられたご友人たち、実はこのお店のマスターやスタッフさん、そのお客さん達だったのです。

しかもなんと。全くの偶然なのですが、ケアマネさんも同じ。
あまりにも偶然が重なりすぎて、ケアマネさんもびっくりしてました。

これはIさんが繋げてくれたご縁だ。

実はHさんのことを紹介してくれたのも、私が看取りをした利用者さんのキーパーソンさん。
こうしてご縁は繋がっていくものなのですね。

Tさんの最期の願い

Tさんは、介入当初からかなり状態が悪く、余命はそう長くないと思っていました。
ただ、Tさんが自宅に戻ってこられた理由は「最後に舞台に立ちたい」ということでした。

Tさんはラジオのパーソナリティなどを経験されていた方でもあり、以前よりこのご友人たちが開催するコンサートにゲスト出演されていたとのこと。

「最後に舞台に立って歌いたい。お世話になった人達に感謝の気持ちを伝えたい」

数日後に予定しているコンサート。
そのコンサートを目標に、ご友人たちが力を合わせて介護し、本人も英気を養い、コンサートの計画を進めておらました。

正直な所。
コンサートが終わったら、全ての力を出し尽くしてしまうのではないか。
いや、そもそもコンサートまで体調が持つのか?
そんな不安を抱えつつも、それでも何とかしてこのコンサートを成功させてあげたい一心で、私達もフォローしました。

コンサート当日

休日ということもあり、介護タクシーの手配にも難航しました。
コンサート後も、皆の打ち上げまで見届けて帰りたいというTさんの意向もあり、帰りは20時過ぎるとのことでしたが、対応してくれる介護タクシーさんも手配しておきました。

コンサートは私も客席から見守らせていただきました。
病気を感じさせないほどの存在感、そして力強い歌声で、5曲ほど熱唱。
最後の方では、時折意識を失っているのが分かりハラハラしながらの鑑賞でしたが、感謝を伝えたい人全てに感謝を伝えコンサートは無事に終了しました。

達成感

予想通り、コンサートの24時間後にTさんは旅立たれました。

ワンルームの部屋に入り切れないほどのご友人たちに囲まれ。
何よりも、最期の願いをやり遂げた達成感でいっぱいだったことと思います。

私もご縁を繋いでいただき、関わらせていただいたことをとても感謝しています。

ちなみに。
後から思い出したのですが。
実はTさんとは、1度だけお店でお会いして隣同士でお酒を飲んでカラオケを歌っていました。

Tさんが旅立たれた後に「あれ?ひょっとしてあの時の?」と思い出したのですが。
それもご本人にお伝えすることなく、旅立ってしまわれました。

いや、ひょっとしたらTさんが天国で気が付いて、私にメッセージを下さったのかもしれないですね。

不思議なご縁で繋がった皆さまと、これからも繋がっていけますように。

「延命」と「救命」の違い ある日突然迫られる選択

「その時」は突然やってくる

皆さんの家族が、ある日突然倒れて意識不明になった

延命処置を希望するかしないか
本人の希望が聞けない状態で、家族が判断しなければならない状況が訪れることがあります。

「延命」と「救命」を家族が判断することは難しく、それを家族だけで決めてしまうことに、迷いも生じることでしょう。

人工呼吸器を装着した場合のその後

例えば。
人工呼吸器を装着した場合の経過についてお話しします。


気道を確保する「挿管」、回復が難しければ「気管切開」そして「人工呼吸器」の装着

意識が戻って危機を脱することができれば、挿管や人工呼吸器の選択は外されます。
ただ、そのまま意識が戻らない、自発呼吸が戻らないなどの状態が続けば、人工呼吸器を装着せざるを得ない状況になります。

ご本人がお元気な時に「延命を望まない」と周囲に話をしておられたら。
人工呼吸器を装着しない、又は人工呼吸器を外すという選択をすることも視野に入ってきます。

羽幌病院事件
「延命処置の中止を希望する家族の同意を得て人工呼吸器を外した医師」の事件が有名かと思いますが。

実際に、家族の同意を得て然るべき経緯を踏めば、人工呼吸器を外すことができます。

ただ、そこには色々な障壁があります。
本人が本当に「延命を望んでいなかったのか?」の証明です。

親族の中でも、意見が分かれる可能性もあります。
実際に介護をしない、遠くの親戚の方が「呼吸器をつけたままでもいいから生きていて欲しい」と、突然モノ申してくる話は良く聞きます。

医療処置をした場合の療養場所

人工呼吸器を装着し、そのまま回復の見込みがなくなった場合で、介護を続ける場合はどのような方法があるのでしょうか?
※実際に処置を施した人の場合の対処方法を紹介しています。興味の無い方は読み飛ばしてください

急性期の病院は入院日数が限られており、退院を迫られます。

①入院したままの状態を望むのであれば、急性期の病院は転院せざるをえません。

②一定期間で病院は転院する必要があります。療養型病床などの特定の病院であれば、入院を継続することは可能です。

③在宅に戻る場合は、介護保険を使って訪問介護や訪問看護を利用しながらの在宅介護になります

④施設入所を希望される場合。医療処置が必要な方を受け入れ可能な施設は少ないので、必然的に選択肢も少なくなります。

最近は、ナーシングホームと言い、医療保険が使える病名の方が入所できる施設が増えてきました。
下記の病名がある方は、そちらでの入所が可能となります。
(下記の病名がなければ医療保険は使えません)

人工呼吸器を例にあげて紹介していますが、胃ろうや経管栄養、中心静脈栄養なども同様の条件です。

エンディングノートの活用

このように、延命処置を希望するのかしないのか、選択を迫られる日はいつ訪れるか分かりません。
意思表示を聞いている人が対応すればまだ良いのですが、必ずしもその瞬間に対応できるとは限りません。

また、その判断が本人同士だけでやりとりされた約束であった場合。
その親類縁者が突然出てきて「本当にそんなことを言っていたのか?」「何も処置をせずに見殺しにするつもりなのか?」などと、意義を申し立てる可能性も少なくありません。

「口から食べられなくなった時」「誤嚥性肺炎を繰り返すとき」→胃ろうをするかしないか
もしくは、点滴をするのかどうか

「延命処置をしない」「点滴はしない」とは決めていても、点滴や投薬等で状態が改善する可能性のある時は、治療を受けた方がいいです。
例:肺炎の治療のための抗生剤の投薬(点滴、内服)等

介護をしていると、様々な判断をしなければならない状況になります。

日本人は「死」=縁起でもないことと、話すことを忌み嫌う傾向にあります。
「元気だからまだまだ必要ないだろう」と思って、先送りすることもあります。

いざという時に困らないため、家族を守るためにも
家族で話し合っておくことが大切だと思います。

エンディングノートは色々な種類のものが販売されています。
地域で「人生会議」などの名目で、エンディングノートの書き方などのセミナーなどが開催されている場合もあります。

是非エンディングノートを活用した、家族で人生会議を開催してください。

施設=悪?家族形態の変化によって看取りの場所も変わっていた

施設=悪のイメージ

介護をしている方の訴えを聞いていると、施設に入れることに対して抵抗を感じておられる方が多い印象を受けます。

親を施設に入れるなんて・・・と、罪悪感を感じてしまわれるようです。

介護はしないのに口だけ出す親類などが
「施設に入れるなんて可哀想よ」などと追い打ちをかけて
更に罪悪感を募らせる悪循環に陥ります。

現代社会の介護問題

日本の約60%が核家族です。
昭和30年代までは、大家族が主流でした。
3世帯での同居は当たり前の風景で、おじいちゃんおばあちゃんの居る家で生まれ、子供たちはおじいちゃんおばあちゃんの死を身近に見て「死」というものを自然に受け入れてきました。

介護も当然家族がするのが当たり前であり、大人から子供までが役割を分担し、子育てから介護までを家族皆で支える家族形態でした。

昭和30年代核家族化が進むと同時に医療が発達し、病気になったら入院して、最期は病院で迎えるということが増えてきました。

1950年代から看取りの場所=病院が大多数となっています。
ところが。
高齢化社会が目の前に迫ってきた2000年代
働き盛りの世代に介護の問題が必須になってくることで、介護保険が制定され、介護の負担を減らそうとする動きが出てきました。

また、その時期と同時に「看取りの場所」の問題が浮上したのです。

日本の人口の3割近くが高齢者となることを目前にし、全ての高齢者の看取りの場所が病院になったら、圧倒的に病床数が不足するという問題が明らかになりました。

介護保険制定と同時に「看取りの場所」も在宅にシフトしましょうという流れが出来上がったのです。

昭和と令和 看取りの場所と家族形態

私も長い間在宅介護・看護の世界に身を置いており、当時は「自宅で看取りをしましょう。支えますよ」と、在宅介護を積極的に勧める立場でした。

ただ、介護を全て自分がしなければならないという強迫観念、ご両親を施設に入れたことに対し、後悔や罪悪感を抱えておられる方が多い現状。
そこに対しては「違いますよ」と声を大にしていいたい。

核家族ではなかった当時は、お嫁さんは仕事をしていなかった又は農業や自営業をされており、社会との折り合いを考える必要はなかったと思います。
勿論、家事の負担は今よりも数段多く、現代よりは大変だったことは大前提として。
それでも、小さい子供たちも手伝いをしていた時代ですから、仕事・介護・家事・育児全てを担っている現代とは少し状況が違うと思います。

その後は核家族化し、病院での看取りが当たり前の時代になり
ここに来て急に「自宅で介護」「自宅で看取り」を推奨するような動きになったことが、自分で介護をしなければならない強迫観念、施設に入所ささせることへの罪悪感を生む原因になっているのではないでしょうか?

地域包括支援センターを活用しよう

私が在宅での別居介護を選択した理由は「同居介護は絶対に無理」と思ったからです。

在宅介護の現場を見てきた経験から来る確証かもしれませんが。
そもそも、元気な時の母親とでも同居は絶対に無理だと思っていたので、介護となるとそのハードルはもっと上がることは予想できました。

在宅介護に関する知識があったので、どのようにケアを組み立てれば在宅独居が可能かというのが分かったというのは大きかったとは思いますが。

介護の相談がしっかりできれば、そこの問題はクリアできると思います。
地域包括支援センターなどで相談してみましょう。

笑顔で介護できる程度の距離を作ろう

65歳以上の高齢者で、3人に1人は老人施設に入居しています。
半面、介護を理由とした離職、介護離職は2022年で7.3万人でした。

介護は24時間365日です。
介護を始めると思ってもいない壁が、次々と立ちふさがることもあるでしょう。
介護はある程度「距離」を保つことが必要だと思っています。

昭和の大家族の時代のように、介護と家事の担い手は多くなく、現代社会では仕事という社会との繋がりも必須になってきます。
介護によって社会との交流が分断されると、介護者のストレスを増加させる可能性があります。

デイサービスやショートステイ、介護保険を存分に使って、できるだけ今までの生活が続けられるよう、社会との繋がりが分断されないように心がけたいですね。

現代社会では、少ない介護者で高齢者を支えるには限界があります。

お互いが「笑顔」で過ごすことができるのを1番に考えて、選択をしていけば良いのではと思います。

認知症の対応方法その② 俳優になろう

話に付き合う、話を逸らす

ある時、母は神妙な面持ちで呟いた

「あのね。昨日頑張って仕事でもらったお金が、なくなったのよ」

あぁ。またいつものやつだ。

認知症の症状が強くなってきた当初、母のこんな一言に、正論でぶつかっていました。

私「何言ってんねん。そんな体で仕事なんてできるわけないやん。昨日はデイに行っとったやろ」
母「デイの帰りにもらったんよ」
私「誰がお金くれるねん。もらえるなら私も欲しいわ」
母「ほんとにもらったんよ。あんたはいつもそうやって人を馬鹿にして!」
・・・と言う感じでお互い語気が強くなり、不穏な空気が漂い始めます

実はこれは間違った対処方法です。
認知症のことを理解していたはずなのに、自分の親に対しては正しい対処方法を実践できていなかったのです。

BPSD(周辺症状)とは

認知症の症状というのは基本的に「中核症状」と呼ばれるもので

記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能障害、言語障害(失語)、失行・失認などの認知機能の障害

などがあります。
具体的に言うと

時間や場所が分からなくなる見当識障害 例:昼夜逆転、迷子など
計画的に行動することができない実行機能障害 例:料理ができなくなるなど
今までできていた日常生活の動作ができなくなる失行 例:服が正しく着ることができないなど
物が理解できなくなる失認 例:人の顔が分からなくなる

という感じです。

ここで、認知症の症状として誤解されがちなのが
周辺症状と呼ばれる症状です。

暴言・暴力、徘徊、うつ状態、不潔行為、妄想など

じつはこれらの症状は二次的症状と言われ、認知症の症状によって起こされる症状なのです。

認知症になると、前述した中核症状があることによって大変不安な気持ちになります。
できなかったこと、失敗したことに関して、本人は何故それができなくなったのかとても不安で焦っています。

そこへ「何でできないの?」「違うでしょ?」「ちゃんとして」などの声掛けをされると、ますます不安になります。
見当識障害によって「されたこと言われたこと」は、忘れることはあっても、不安な気持ちは残ってしまいます。
不安が蓄積すると、暴言や暴力、うつ状態などの症状を引き起こす可能性があります。

徘徊については、徘徊するには理由があります。
参照:「徘徊」ではありません!在宅で安心して暮らす地域の課題とは?
「どこか行きたい所がある」から外に出る、見当識障害や失認があるから家に帰れなくなる。

また、不快なことがある(「便秘でお腹が苦しい」「失禁して下着が汚染して気持ち悪い」等)けど、どのように訴えていいか分からない、何をどうしたらいいか分からないから、弄便(ろうべん:便を触ること)や汚染した下着を隠したりするのです。
それが、不潔行為と言われる行為です。

認知症の中核症状を理解し、適切に対処することで、周辺症状は最小限に留めることができるのです。

俳優になろう

では「財布が無い」と言い始めた時に、実際にどうするのが良いのか?

認知症介護のストレス軽減テクニック 物盗られ妄想の対応方法
では、同じものを準備して渡すというテクニックを紹介しました。
否定するのではなく、別の話に誘導するという感じですね。

「昨日は仕事なんて言ってないでしょ?」と正論を伝えても、本人の頭の中では「仕事に行ってお金をもらった」ということが記憶として認識されているので、本当のことを言ったとしても「否定された」としか感じません。

ここは一度俳優になって付き合ってみましょう。

母「昨日仕事に行ってもらったお金が無くなったのよ」
私「そのお金なら、金庫に入れたよ」
母「買い物行きたいから、少しくらい持たせてちょうだい」
私「後で買い物行こう。もうすぐおやつの時間やから、コーヒー淹れよか?」
母「そうね。ありがとう」

という感じに。
実際はこれよりも若干長引くことはありますが。
それでも、一旦受け止めて付き合うことで「認めてもらえた」という安心感で、徐々に落ち着いていくはずです。

認知症でも笑顔がいっぱいだったHさん

訪問看護に行っていた認知症の利用者さんで、印象に残っているHさん。

おやつはあるだけ全部食べてしまう、何度も何度も同じ会話を繰り返す。
認知症はかなり進行している方でした。

でも、娘さん、お孫さんはそんなHさんに対して、
決して否定せず「あら、そうなのね」といつも笑顔で応対していました。

Hさんはいつも笑顔で、周辺症状もそれほど強くありませんでした。

認知症になって不安なのは本人が一番感じているはずです。
介護する側が笑顔で「大丈夫」と対応していたら、少しでも安心して過ごすことができます。

完璧にはできなくてもいいですが、俳優になって笑顔でかわす時間も確保するのも、一つのテクニックですね。