「徘徊」ではありません!在宅で安心して暮らす地域の課題とは?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

警察と顔見知りになる

「お母さまが保護されてます」
母が神戸に越してきてから、何度警察から電話がかかってきたことだろう。

私もスマホに表示される「110」を含む電話番号をみて、相手が話し出す前に「またですか?」と聞いたこともある。

「在宅での一人暮らしは無理です」と言われて覚悟していたことは夢だったかのように、退院後は元気に歩き回るようになった母。
毎日たくさんの来客もある(という幻覚が見えている)ので、冷蔵庫の中身が少なければ、毎日でも買い物に行って大量の料理を作る。

金銭面もさることながら、一番厄介なのが「迷子」だ。
生来方向音痴に加えて認知症も加わったため、90%の確率で迷子になる。

家に帰れなくなって警察に保護されること10回近く。
すっかり警察の常連になってしまった。

「徘徊」ではありません。施設入所が必ずしも幸せとは限りません!

警察の常連になることで、メリットとデメリットがあった。

メリットとしては、保護された時にすぐに連絡がつくこと。
「お母さま”また”保護されてますよ」となる。私の対応も手慣れてきた。

デメリットととしてただ一つ。
一度だけ警察官に食って掛かったことがある

怪我をして救急車で運ばれたこともある。
冬の寒い日に上着も着ずに外に飛び出して迷子になり、体が冷え切っていたこともある。

そんなある時、保護した警察官が言った一言
「こんなにしょっちゅう徘徊しているんだったら、施設とか考えたらいかがですか?
寒い日に迷子になったりして、冷え切って可哀想ですよ」

その一言は聞き捨てならなかった。

「徘徊という言葉は今は使いませんよ。母は徘徊しているのではなく、買い物に行きたくて迷ってるだけです。幻覚の恐怖から家を飛び出して迷子になってるだけです」

「母はまだ動けます。料理が大好きで、買い物をして料理をすることが生きがいなんです。それがリリハビリにもなって機能低下を予防するんです。施設に入ったらその全ての自由を奪うんですよ?今の母に施設入所が必ずしも幸せとは限りません。迷子になっても危険がないようにするのが地域の役割、警察の仕事の一つなんじゃないですか?」

言い過ぎたかなと思ったけど、言わずにはいれなかった。
私の剣幕に警察官は押し黙ってしまい、それ以後同じセリフを聞くことはなかった。

救急車の常連の利用者さん

当時、私が勤めてた定期巡回随時対応型訪問介護看護事業所#1で、精神科疾患の利用者さんのがいた。


不安が強く、救急車や呼んでしまったり、外に出て騒いだりすることがあった。
騒ぐと警察も出動する羽目になる。
救急車で実際に運ばれたこともあるし、対応に苦慮して立ち往生することもあった。
救急搬送できないとき、警察が出動したとき、必ず家族かそれに該当する人の対応が必要となる。
私も経験あるから分かるが、毎回毎回すぐに駆け付けることができないのが現状だ。


それでも、本人の精神面や経済的理由などにより、在宅での生活を選択。

事業所スタッフが家族の代わりに対応し、ご家族の負担を軽減させることで、在宅生活を継続することができたという経緯がある。

在宅介護の限界点、地域の課題

認知用サポーターという取り組みがある。
認知症の正しい理解と対応方法を学び、認知症に優しい地域づくりをするというのが目的。

ちなみに。外に出ると危ないからといって、外から鍵をかけるのは「虐待」に該当するので禁止されているので、自由に出入りできる状態維持は必須。

外に出てしまった時、迷子になってしまったとき。
地域の人の見守り・警察官などの協力で安全が確保できれば、在宅介護の限界点はもう少し上げることができるのでは?

明日は我が身。
私たちが高齢になる時に、自分たちの安全が確保できるような社会を作るのは、自分自身とその地域の役目ではないだろうか。

#1 定期巡回随時対応型訪問介護看護とは

訪問看護員等が、24時間体制で定期的に利用者の居宅を巡回して、入浴・排泄・食事等といった日常生活の世話を行う。緊急時はナースコールのような端末によって通報ができ、状況に応じて随時の対応ができるサービスである。
神戸市内では各区に2か所程度の事業所がある。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。

介護のお悩み共有しませんか?
在宅介護・在宅看護経験20年。
パーキンソン病+レビー小体型認知症の母親介護中
高齢者施設関係の仕事しています。
コメントまたはインスタまで
介護相談イベントは、インスタでアナウンスします

コメント

コメントを残す

*